![]() |
|
Column |
|
![]() |
![]() ◇淀川長治さんが好きな訳 若い人は知らないかもしれませんが、その昔日曜洋画劇場の解説者で有名な映画評論家の淀川長治さんという人がいました。私は子供の頃から淀川さんの顔を見ていて、大人になった時にもやっぱり同じ顔でTVの日曜洋画劇場の解説をしているのを見て、この人はいったい何歳の人なんだろう・・・、なんて思ったことがありました。 さて、私はけっこう淀川長治さんが好きなほうです。実は日曜洋画劇場をそれほど見ていたわけではないのですが、淀川さんがずいぶん昔に(30年位前かなあ)土曜日の午後にラジオ放送で映画の話をしていたのを聞いていたことがあり、「ああ、この人は心底映画が好きなんだなあ・・・。」と感じてから、淀川さんという人に親しみを感じるようになったのです。 ある日は西部劇の話の特集をしていました。「アメリカの西部の小さな村。それも一軒の家の周りには何にも無い。隣の家まで何時間も馬車で行かなくちゃあ行けないところなんですね。そんな家に住んでいる男の子が、木でつくった玩具の鉄砲で遠くにいる鹿に狙いをつけているんですよ。 男の子が狙いをつけると口で「パン・パ〜ン。」て撃つまねをするんです。そうして鹿のほうを見ていると、その向こうになにかがいる。遠くのほうから馬に乗ったシェーンがロンリーライダーでやって来るんですね。 男の子は友達がいない、家族以外の人に会うのもめったに無い。だから馬に乗ってやってきたシェーンとお友達になりたい、そう思うんですね。一方シェーンも西部の平原を一人でやってきて孤独な身の上、二人は会ったとたんにひかれてゆく、そんな出会いが映画シェーンの始まりなんです・・・。」 ラジオなので映像などないのですが、淀川さんの声だけで映画のシーンが目の前に浮かんできます。いま自分の目の前で物語が進んでいるように話すので、聞いている側にとっても手に取るように映画の画面の端まで見えてくるのです。 また、映画の中の話だけでなく、西部劇が好きな人の話なんかもしていました。「ロードショーで「真昼の決闘」をみた人の話なんですけど・・。」という前置きで、「映画が終って外に出てきたらその男の人が、またチケット売り場に来てチケットを何枚も沢山買ったんです。何をするのかなあと見ていると、映画館の前で今買ったばかりのチケットを配って、みんなにこの映画は面白いから見ろ、って勧めるんですね。 チケットを配り終わると、再び沢山買いこんで通行人に配っているんです。それを見ていた映画館の支配人が驚いてその男の人に「チケットを買ってくれるのはありがたいのですが、そんなに買ってくれるのなら、割引でお分けしますよ。」と言ったんです。そしてそれを聞いた男の人は「そうじゃあないんだ。俺はお金を出してこの映画を人に見せるのがうれしいからやってるんだ。じゃましないでくれ。」そう言ったんですねえ。昔の映画ファンはこんな人もいたんです・・・。」 ラジオの向こうでにこにこ笑いながら話している淀川さんの顔が見えるようです。 映画の解説の仕事のために、取材にも力を入れていたようで、中でも大好きなチャップリンと日本であったときの話もうれしそうにしていました。「チャップリンご夫婦と伊勢志摩の真珠の養殖場へ行ったんですが、チャップリンが私に「どの真珠が良い真珠なのかどうやって見分けるんだ?」って聞いたんですよ。私はついつい「真珠を舌の上にのせてご覧なさい。冷たいと感じる真珠が良い真珠なんですよ。」なんて適当な話をいっちゃったんです。そしたら夫婦二人して、真珠を手に取ると舌の上に一々のせてみて「お〜これはGOODだ!」なんてはしゃぎながら楽しんでいました。」 大好きなチャップリンに楽しんでもらえて、大喜びする淀川さんの姿が見えるようです。まじめなばかりではない、楽しい人だったんだなあ、なんて思います。 もうひとつこんな話を覚えています。淀川さんがロスアンゼルスに取材に行ったときの話です。「その頃最新作でフォローミーって言う映画がアメリカで公開されていたんです。私は早速、英語辞書で調べて、フォローミーって言う言葉が「私の後をつける」って意味であることを知ったんですが、その後でホテルから出て歩いていたんです。私の前をホテルのレセプションにいた綺麗な金髪の女性が歩いていたんですが、彼女がくるっと振り向いて「アー、ユー、フォローミー」って言ったんです。私はもう、うれしくて、ニコニコしながら「イエス、イエス。」って答えたんです。彼女が「私の後をつけているんですか?」って聞いたことが分かったからうれしかったんです。」 淀川さんは映画が好きだけじゃあなくて、やっぱり人が好きな人だったんじゃあないかな。お話を聞けば聞くほど、人のことを楽しくさせるのが上手で、自分自身も楽しんでいるそんな人柄が見えてくるような気がします。 |
|
|
|
|
copyright (c) movie.raindrop.jp. all right reserved. since2011 リンクフリー:どのページへのリンクでもOK |
|